十干と十二支とは
十干や十二支が実際に使われている出来事や名称
海外の十二支
まとめ

年末が近づくとよく耳にする「干支」。年賀状を書く時期になると「来年の干支は何だっけ?」という話題が出るように、干支といえば寅(トラ)や酉(トリ)など「十二支(じゅうにし)」を思い浮かべる人も多いかもしれません。しかし、干支は「十干十二支(じっかんじゅうにし)」を略した言葉。正確には、十干(じっかん)と十二支を合わせたものが干支です。

意外にも多くの名称や出来事に用いられている十干と十二支。気づかないうちに身近なところで目にしているかもしれません。今回は十干と十二支について紹介します。

十干と十二支の正体

干支を構成する十干と十二支。そもそもどういったものなのでしょうか。十干と十二支をそれぞれ解説していきます。

十二支とは?

元々の十二支は動物ではなかった?

元々の十二支は動物ではなかった?

子(ね)、丑(うし)、寅(とら)、卯(う)、辰(たつ)、巳(み)、午(うま)、未(ひつじ)、申(さる)、酉(とり)、戌(いぬ)、亥(い)の12種類の動物によって構成されている十二支。紀元前の中国で、暦や時間を表すために使われ始めたのが起源とされています。

当時の中国で年を数える時に使われていたのが木星の動き。人々は木星の位置で年を数えていて、木星の公転周期が12年であるために天を12等分しました。この時に誕生したのが十二支の起源。実は子から亥の12個の漢字は、中国で数を表すものです。

この十二支を浸透させようと、王充(おういつ)という人物が動物の名前に変更。つまり、動物の意味は後から付け足されたものです。日本に伝来した頃には、時間や月にも当てはめられるようになった十二支。お昼の12時を正午、その前後を午前、午後と表すのは、11時から13時を午の刻と呼ぶことが影響しています。

十二支に選ばれた動物に込められた意味を、1つずつ見ていきましょう。

十二支最初の動物はネズミ

十二支最初の動物はネズミ

子が表しているのはネズミ。十二支の中で1番目の動物です。ネズミは繁殖力が高いことから、子宝の象徴とされている動物。子孫繁栄の意味を込めて、ネズミが当てはめられました。

生活に欠かせないパートナーだったウシ

生活に欠かせないパートナーだったウシ

昔はウシといえば生活のパートナー。重い荷物を運んだり畑を耕したりと、生活に欠かせない動物でした。ウシは力強さの象徴。粘り強さや誠実さを表すことから、丑という字にウシを当てはめました。

トラは勇敢さを象徴している

トラは勇敢さを象徴している

トラは勇猛果敢な動物。その勇ましさから、トラが当てはめられました。また、決断力の高さや才覚のある様子も表されています。

ウサギには飛躍という意味も込められている

ウサギには飛躍という意味も込められている

おとなしくて穏やかなイメージがあるウサギ。安全の象徴という意味が込められています。また、ウサギの特徴といえば跳躍力。飛躍や向上という意味も込められているそうです。

龍は権力を象徴する

龍は権力を象徴する

辰はドラゴン、つまり龍のこと。十二支の中で唯一空想上の生き物ですが、東洋において龍は生活に密接しているモチーフでした。中国では古代から龍といえば権力の象徴。日本もその影響を受け、辰は権力の意味合いを持っています。

ヘビは再生を象徴する動物とされている

ヘビは再生を象徴する動物とされている

巳が表すのはヘビ。脱皮を繰り返して成長するため、永遠や生命、再生の象徴とされています。

ウマも人々の生活に密接した動物

ウマも人々の生活に密接した動物

ウマもウシと同様に生活に欠かせない存在。粘り強さを表すウシとは異なり、ウマは健康や豊作を象徴する動物として十二支の1つになっています。

群れで行動するヒツジは家内安全の象徴

群れで行動するヒツジは家内安全の象徴

ヒツジは群れでの生活を好む動物。その特徴から、家内安全の象徴とされています。

サルは知能の高い動物

サルは知能の高い動物

知能が高く、神の使いであると信じられてきたサル。賢者を象徴する動物として、十二支に選ばれています。

トリは商売繁盛の象徴とされている

トリは商売繁盛の象徴とされている

酉という字はトリ、特にニワトリを表すもの。「酉の市」という言葉があるように、商売繁盛の象徴として扱われています。

イヌは忠義の象徴とされている

イヌは忠義の象徴とされている

イヌもウシやウマと並び、古くから生活をともにしてきた動物。特に主人に忠実であることから、忠義の象徴という意味があります。

イノシシには無病息災の意味が込められている

イノシシには無病息災の意味が込められている

昔からイノシシの肉は万病に効くと考えられており、イノシシは無病息災の象徴。また猪突猛進という言葉から、一途で情熱的なイメージも含まれています。

日本における十二支の由来

日本では神様の手紙により十二支が決まったとされている

日本では神様の手紙により十二支が決まったとされている

中国ではそれぞれの動物に意味が込められていますが、日本で十二支の由来とされているのは昔話。ある時神様が「1月1日の朝、1番から12番までに来た動物を1年交代で動物の大将にする。」という手紙を書きます。それを受け取った動物たちは1番になろうと出発。ただし、1月2日の朝に行けば良いとネズミに騙されたネコだけは出発しませんでした。

新年の太陽が昇った時、最初に現れたのはウシ。前日の夕方から出発し、1番に到着しました。しかし、実はウシの背中にはネズミが。ウシの背中から飛び下りて1番に到着したネズミは、十二支で最初の動物になりました。その後次々と動物たちが到着。12番目のイノシシが到着し、神様と十二支による宴が始まりました。

そこへものすごい剣幕で現れたのがネコ。騙されたネズミを追いかけ回します。さらに、途中まで仲良く並んで走っていたイヌとサルは、必死になるあまり大喧嘩を開始。宴の間も喧嘩が続いていました。これがきっかけとなり、今でもネコがネズミを追いかけ、イヌとサルは「犬猿の仲」と言われているそうです。

十干とは?

猿田彦神社には十干と十二支で方位を表す「方位石」がある

猿田彦神社には十干と十二支で方位を表す「方位石」がある

十二支に比べて、あまり聞き馴染みのない十干。こちらも古代中国の思想から考えられたものです。十干は10日間を一区切りにし、1日ずつ名前をつけたもの。「甲(こう)、乙(おつ)、丙(へい)、丁(てい)、戊(ぼ)、己(き)、庚(こう)、辛(しん)、壬(じん)、癸(き)」という10個の要素で十干は成立しています。

日本では独自の十干の読み方が誕生。順番に「きのえ、きのと、ひのえ、ひのと、つちのえ、つちのと、かのえ、かのと、みずのえ、みずのと」となりました。十干の読み方がこのようになるのは、「陰陽五行思想(いんようごぎょうしそう)」という中国の思想が関係しています。

十干の根底にある陰陽五行思想

十干の根底には陰陽五行思想がある

十干の根底には陰陽五行思想がある

陰陽五行思想は、陰陽説と五行思想が合わさってできたもの。陰陽五行思想を用いることで、十干だけでなく全てのものを説明できると言われています。

陰陽説とは、「陰」と「陽」の2つの要素が森羅万象を構成しているという考え方。「光と闇」、「昼と夜」などが陰陽説に当てはまります。一方で五行思想は、「木、火、土、金、水」という5つの要素が万物を構成しているという考え方。月曜日や火曜日は、五行思想にエジプトの思想が結びついて誕生した言葉だそうです。

陰陽五行思想により、十干の読み方が決定。十干における陰と陽は「兄(え)」と「弟(と)」が当てはまります。また五行思想によって、十干の甲と乙に木、丙と丁に火、戊と己に土、庚と辛に金、壬と癸に水をそれぞれ分配。これにより、日本独自の十干の読み方が誕生しました。

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その他伝統・日本文化

十干と十二支の組み合わせは何通り?

60歳が還暦なのも十干と十二支によるもの

60歳が還暦なのも十干と十二支によるもの

ここまで十干と十二支について説明してきましたが、十干と十二支は1年ずつ変化します。組み合わせが変わることによってその年の干支が決定。例えば、十干が丙で十二支が子の場合は「丙子(ひのえね)」、十干が壬で十二支が寅の場合は「壬寅(みずのえとら)」となります。

十干が10種類で十二支が12種類あるので組み合わせは120通りになりそうですが、実は十干と十二支の組み合わせは60通り。これは十干と十二支の差が2つだからです。2つずつずれていくので、1つの十二支と組み合わさる十干は5種類。これによって十干と十二支の組み合わせは60通りとなり、十干十二支を「六十干支(ろくじっかんし)」と呼ぶこともあります。

また60歳になった時を「還暦」として祝いますが、これは干支が60年で1周して元に戻るからです。

十干や十二支が実際に使われている出来事や名称

ここまで十干と十二支について解説してきましたが、意外と身近なところに十干と十二支が用いられています。何気なく使っている人も多いはず。どんな場面で十干や十二支が使われているのか見ていきましょう。

甲子園球場

甲子園という名前は十干と十二支によって決まった

甲子園という名前は十干と十二支によって決まった

全国の高校球児が夢見る舞台「甲子園球場」。兵庫県西宮市にある球場で、正式名称は「阪神甲子園球場」です。甲子園が完成したのは1924年。この年は十干が甲で十二支が子であり、甲子(きのえね)の年でした。甲子は十干十二支の中で最初の組み合わせ。縁起の良い年とされているため、甲子園という名前が付きました。

契約書

契約書にも十干が使われている

契約書にも十干が使われている

物を購入する際や情報を登録する際に使用する「契約書」。実は契約書には十干が用いられています。それは契約当事者を表す「甲」と「乙」。会社の正式名称や個人名を省略するために使用されています。

契約書の表記では、契約される側(会社など)が「甲」で契約する側(お客さんなど)が「乙」で表されるのが一般的。十干を用いるのは日本独特の文化で、契約書の作成が楽になることや読み慣れた人には理解しやすいという理由で十干が用いられています。

恵方

恵方にも十干と十二支が影響している

恵方にも十干と十二支が影響している

毎年節分が近づくと話題に上る「恵方」。その年の恵方を向いて恵方巻きに無言でかぶりつくことで願いが叶うと言われ、ニュースや新聞でも恵方が発表されます。そんな恵方ですが、実は十干によって決まっているのをご存知でしょうか。

昔の中国では、真北を子として十二支によって方角を分割。その上で北東、北西、南西、南東の4つを除いた方角に十干が当てはめられました。五行思想における土は中央を表すため、戊と己は中央に当てはまります。

恵方を決めるルールは全部で3つ。1つ目は、その年が兄(え)の年であれば十干が指す方角が恵方になるというものです。一方で弟(と)の年は、5年前と同じ恵方になるというのが2つ目のルール。この2つのルールだけでは戊の方角がなくなってしまうので、戊の年は5年前の恵方と同じになるという第3のルールが追加されました。

つまり恵方は4種類しか存在せず、その方角を決定するのが十干なのです。

戊辰戦争

戊辰戦争の舞台となった鶴ヶ城

戊辰戦争の舞台となった鶴ヶ城

1868年、大政奉還後に不満を持つ旧幕府軍と新政府軍が衝突した「戊辰戦争」。「鳥羽・伏見の戦い」を皮切りに、約1年半に及んだ戦争です。この名前を決めたのも十干と十二支。1868年が戊辰(つちのえたつ)の年だったことで、戊辰戦争という名前になりました。

他にも、十干と十二支が名前の由来となっている歴史上の出来事は数多く存在。甲午農民戦争や壬申の乱、辛亥革命も当てはまります。

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【鶴ヶ城】は会津若松のシンボル!歴史や見どころとは? 福島県会津若松市のシンボル「鶴ヶ城」。戊辰戦争の際には「難攻不落の名城」として有名になり、今では日本の100名城に選ばれています。天守閣が幕末当時と同じ赤瓦なのは国内唯一。今回は、鶴ヶ城の歴史や見どころを紹介します。

海外の十二支

日本では多くの人が知っている十二支。世界の十二支には、日本に含まれていない動物も存在します。

猫が十二支に含まれる国もある

猫が十二支に含まれる国もある

タイやチベット、ベラルーシといった国では、ウサギの代わりにネコを十二支の1つとして採用。これらの国では、縁起物としてネコの干支グッズが飾られることもあるそうです。

貯金箱のモチーフにもなっている豚は縁起の良い動物

貯金箱のモチーフにもなっている豚は縁起の良い動物

中国や韓国の十二支に含まれている「豚」。日本におけるイノシシの代わりに十二支に採用されています。これは中国語で亥が豚を表すため。韓国で豚は縁起の良い動物とされ、特に己亥(つちのとい)の年は「黄金の豚年」とも言われています。

水牛

ベトナムでは水牛は身近な存在

ベトナムでは水牛は身近な存在

モンゴルの十二支に登場するのは「水牛」。日本の丑の代わりとして十二支に登場します。「人生の三大行事は、水牛を買うこと、結婚すること、家を買うこと」という言葉があるベトナム。身近な存在であるがゆえに、水牛が十二支に含まれているそうです。

他にもワニやクジラが十二支に含まれているという国もあるそう。世界の十二支を調べてみることで、国ごとの独自性を感じられるかもしれません。

十干と十二支は身近な存在

今回は十干と十二支について紹介してきました。干支は十干と十二支の両方を合わせたもの。「干支といえば十二支」と間違って認識していた人もいたのではないでしょうか。その年の干支だけでなく、意外にも多くの場面で用いられている十干と十二支。あなたが生まれた年の十干と十二支を確認してみると、より一層身近な存在に感じられるかもしれません。